紋章
紋章
(伊・Stemma 英・Coat of arms)
ボルジア家の紋章
金地を背景にした緑地に立ち、草を食む赤い牡牛。ボルジアの始祖スペイン、ボルハの街の紋章。
カリストゥス3世(アロンソ・デ・ボルハ)は、ボルハの紋であった赤い牡牛の周囲に金地のふちをつけ、8つの大麦の束をつけ加え、ボルジア家の紋章とした。
大麦の束については、「百合の花」「イチジクの葉「棒の束」などとも言われるが「大麦の束」とする説が有力であるよう。
また金の色は「信仰」の意味を持つ。
カリストゥス3世の紋章
① 教皇の三重冠
てっぺんに十字架のある三重の冠。教皇の位を象徴する。
三重冠は、「司祭・司牧・教導」の三権を象徴するとされる。
「教皇の三重の立場、教会の戦士・改悛者・受難者」を表す、また、「天国・煉獄・教会」を表すとも言われる。
② 交差する2つの鍵(聖ペトロの鍵)
赤い組み紐でつながれる交差した金と銀の2つの鍵。聖ペトロとその後継者(教皇)に与えられた最高権威を象徴する。
金の鍵は天上の鍵であり、宗教的な権威を示す。
銀の鍵は地上の鍵であり、現世的な権威を示す。
このことは「マタイの福音書」で言及されている。
- ① 三重冠 ② 交差する2つの鍵のモチーフは、全ての教皇の紋に共通する。
- ③ の部分は「紋章盾(escutcheon)」と言い、ここに各教皇それぞれの紋が配される。
③ ボルジアの牡牛
金地を背景にした緑地に立ち、草を食む赤い牡牛。ボルジアの始祖スペイン、ボルハの街の紋章。
カリストゥス3世(アロンソ・デ・ボルハ)は、ボルハの紋であった赤い牡牛の周囲に金地のふちをつけ、8つの大麦の束をつけ加え、ボルジア家の紋章とした。
大麦の束については、「百合の花」「イチジクの葉「棒の束」などとも言われるが「大麦の束」とする説が有力であるよう。
また金の色は「信仰」の意味を持つ。
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アレクサンデル6世の紋章
① 教皇の三重冠
てっぺんに十字架のある三重の冠。教皇の位を象徴する。
三重冠は、「司祭・司牧・教導」の三権を象徴するとされる。
「教皇の三重の立場、教会の戦士・改悛者・受難者」を表す、また、「天国・煉獄・教会」を表すとも言われる。
② 交差する2つの鍵(聖ペトロの鍵)
赤い組み紐でつながれる交差した金と銀の2つの鍵。聖ペトロとその後継者(教皇)に与えられた最高権威を象徴する。
金の鍵は天上の鍵であり、宗教的な権威を示す。
銀の鍵は地上の鍵であり、現世的な権威を示す。
このことは「マタイの福音書」で言及されている。
- ① 三重冠 ② 交差する2つの鍵のモチーフは、全ての教皇の紋に共通する。
- ③④ の部分は「紋章盾(escutcheon)」と言い、ここに各教皇それぞれの紋が配される。
③ ボルジアの牡牛
金地を背景にした緑地に立ち、草を食む赤い牡牛。周囲には金地のふちに8つの大麦の束が配される。(サンタンジェロ城の井戸にある2つの紋章だけは、大麦ではなく「炎」と言われる。)
伯父である教皇カリストゥス3世から受け継いだボルジアの紋。
④ ドムス家の金と黒の帯
金と黒で2色交互、横に6分割された帯。アレクサンデル6世の父ホフレ・デ・ボルハの母方に遡るドムス家(Doms)の紋。
これをアレクサンデル6世の母イサベルの母方、ランソル家(Lanzol)の紋とする説もある。
ドムス家の紋とする説の方が有力。
※追記 ランソル家の紋章とする説は1947年に正式に否定されているよう。
右上図に示している紋章盾(③④の部分)は一般的なアイロン型(ヒーターシールド)だが、実際に使われている紋章では、角を増やして「正面から見た馬の頭」のような形になっているものが多い。(下の画像参照。)
これは馬頭型(scudo a testa di cavallo)またはイタリア型(Scudo italiano)と呼ばれるもので、聖職者専用に使われた特殊な盾型図形である。
チェーザレの紋章
① 紋章冠
紋章所持者の地位、爵位などの位階を示す。これはもちろん公爵位の紋章冠。
(チェーザレはヴァレンティーノ公爵であり、ロマーニャ公爵である。)
② フランス王家の百合
青地に3つの金の百合。フランス王家の紋章。
チェーザレはルイ12世の従妹であるシャルロット・ダルブレを妻にし、フランス王家と姻戚関係をもった。
③ ボルジアの牡牛
スペイン、ボルハに由来するボルジア家の赤い牡牛。
④ ドムス家の金と黒の帯
金と黒で2色交互、横に6分割された帯。アレクサンデル6世の父ホフレ・デ・ボルハの母方に遡るドムス家(Doms)の紋。
これをアレクサンデル6世の母イサベルの母方、ランソル家(Lanzol)の紋とする説もある。
ドムス家の紋とする説の方が有力。
※追記 ランソル家の紋章とする説は1947年に正式に否定されているよう。
⑤ 教皇の傘と交差する2つの鍵
教皇領の職位にあることを表す。
チェーザレは教会の旗手(ゴンファロニエーレ・デッラ・キエーザ Gonfaloniere della chiesa)および教皇代理(Vicario)であった。
教会の旗手には教会の紋章と在位中の教皇の紋章を自分の紋章に加える習わしがあった。
上部の三角形は教皇の傘(ウンブラクルム unbracullum)。金と赤のストライプで描かれる、ローマ・カトリック教会を表すシンボルのひとつ。
(当時は教皇の色は白ではなく、金と赤であった。)
その下にあるのは赤い組み紐でつながれる交差した金と銀の2つの鍵(聖ペトロの鍵)。教皇の権威を象徴する。
- 現在、教皇の傘は「使途座空位 sede vacante」(使徒座、つまりローマ教皇が死亡または退位により空位であること)を表すものとして使われる。が、チェーザレの時代にこの意味合いはないよう。
- 教皇の傘を教皇の権威の象徴として用いたのは、アレクサンデル6世が最初と言われる。
枢機卿時代、チェーザレは父アレクサンデル6世から受け継いだ「ボルジアの牡牛」(③)と「オムス家の金と黒の帯」(④)の紋章を使っていた。
1499年、フランス貴族となってから「フランス王家の百合」(②)がつけ加えられ、枢機卿の紋章冠に替わって「公爵の紋章冠」(①)が冠された。
「教会の旗手」「教皇代理」(⑤)としての紋は紋章盾の中央に配される。
チェーザレの紋章として赤いイバラに囲まれたこの紋がよく使われるのは、ミラノのメルツィ古文書館に当時のものが遺されているからだと思われる。(左下の写真)
ガンディア公ホアン・ボルジアの紋章
① 紋章冠
紋章所持者の地位、爵位などの位階を示す。これは公爵位の紋章冠。
(ホアンはスペインガンディアの公爵である。)
② ボルジアの牡牛
スペイン、ボルハに由来するボルジア家の赤い牡牛。
③ ドムス家の金と黒の帯
金と黒で2色交互、横に6分割された帯。アレクサンデル6世の父ホフレ・デ・ボルハの母方に遡るドムス家(Doms)の紋。
これをアレクサンデル6世の母イサベルの母方、ランソル家(Lanzol)の紋とする説もある。
ドムス家の紋とする説の方が有力。
※追記 ランソル家の紋章とする説は1947年に正式に否定されているよう。
ホアンの紋章は彼の公国であったスペイン、ガンディアの街に多く見られる。
その他の人々の紋章
アッピアーノ家
赤と銀のフュージリー(英・fusilly)(斜線の組み合わせで交互に塗り分けられ、縦に細長く菱形に分割された紋章図形のこと。)
ヴィテッリ家
クォータリー (英・Quarterly)(伊・inquartato)(4分割された紋章図形のこと)
青地に金の上弦の三日月と、赤と金のチェッカー(格子柄)。
ヴィテッリ家の紋章はもうひとつ、子牛が描かれたものもあったよう。(Vitteliは、子牛vitteloの複数形。だから確かにありそう。オルシーニの熊みたいに。)
下記の赤地に金のシェブロンの紋章もヴィテッリ家の紋章のようなので、個人で使い分けしてたのか、または時代とともに変化したのか?
赤地に2つの金のシェブロン(紋章の左右にわたる幅広の逆V字形の図形。山形紋)。
この図形は十字軍の時代から紋章で使わていて、屋根梁のかたちに由来するとされている。「保護」と「信頼できる建築家たち」を意味するらしい。
Wikipediaではパオロ・ヴィテッリ(ヴィテロッツォの弟)の紋章がこれになっている。
エステ家
青地に、金の冠をかぶって翼をひろげる鷲。
古代フェラーラの紋章だっ青地に金の3つの百合が足されている紋章もある。
1535年からはそれに加えて、神聖ローマ帝国の総統の鷲、教会の旗手を表す金と銀の2つの教皇の鍵などが足されている。
オルシーニ家
銀と赤の斜め帯。上部には赤いバラが描かれ、真ん中には金地の帯に蛇のようにうねったウナギが描かれている。
ウナギはオルシーニの居城であるブラッチャーノの湖の象徴。
オルシーニは分家がやたら多い一族なので、バラの色や配置が微妙に異なる紋章がたくさんある。ウナギがないものもあるし。
また、オルシーニはオルソ(orso)(クマ)の意味を持つので、クマが描かれた紋章もある。
コレッラ家
- 最初のコレッラ家紋章
赤の地に銀のタウ十字架と、十字架を四角に囲む銀の蛇。上部に蛇の巻きついた女性の頭部。
タウ十字架とは左の紋章のようなT字型の十字架のこと。ギリシャ語のT(タウ)から来ている。
蛇は恩義を表し、尾を噛む姿は永遠を表す。
十字架はタウ十字架ではなく、左のようなクロス・ポーテントであったとも言われる。
クロス・ポーテントとはTが上下左右にくっついたような十字架のこと。
(英・Cross potent)(crutch crossとも。crutchは松葉杖のこと。スペイン語ではCruz pateada、足のついた十字架というような意味。イタリア語ではCroce potenziata)
この古の紋章は、記述が残っているだけで、現在も見られるのものが存在していない。ので、どちらが本当なのかはわからない。
おそらく12世紀後半頃に使用されていた紋章。
モットー(紋章の主に下部に書かれる家訓のようなもの)はこの時代からずっと「Esdevenidor(来るべき未来)」。かっこいい。
- 13世紀のコレッラ家紋章
金地に3本の赤い縦帯と、金地に銀の鐘。(青の鐘という説もある。)
ペドロ(ペレ)・ルイス・コレッラ(Pedro(Pele) Ruíz de Corella)(ミゲルの祖父の祖父の祖父)の時代に、新たに使用されるようになった紋章。
コレッラ出身の富豪で有力者だった一族は、アラゴン王ハイメ1世征服王(在位1213年 - 1276年)に仕え、ヴァレンシア征服に参加した。(ボルジア家と同じですね!)
1240年、ハイメ1世は獲得した地を臣下に分配して封土する。(ボルジア家と同じですね!!)
この時この新たな紋章も授与されたよう。
現在は、15世紀にコレッラ家の所領であったベナヴィテス(Benavites)の街の紋章に、名残りが見られる。
- 15世紀のコレッラ家紋章
シメン・デ・コレッラ(ミゲルの祖父)の時に、新たに作られた紋章。
アラゴン王アルフォンソ5世に、アラゴン王家の紋章とナポリ王国の紋章の使用を認められ、組み入れた。
4分割し、かつ6つのフィールドになるように分割する。
1・アラゴン王国の紋章
金の地に4つの赤い縦帯。
2・3・ナポリ王国の紋章
3つに分割し、
1.金の地に4つの赤い横帯
(アラゴン王国の紋章)
2.青の地に金の百合(フルール・ド・リス)
(アンジュー家の紋章。ナポリはフランスのアンジュー家の統治下にあったので)
3.金地に金のエルサレム十字架
(エルサレム王国の紋章。エルサレム国王の称号または王位請求権は、ナポリ王位に属するものとして扱われていた)
4・シチリア王国の紋章
斜め十字に4分割し、
1.4.金地に4つの赤い縦帯
2.3.金地に鷹
5・ナヴァーラ王国の紋章
赤の地。初代ナヴァーラ国王イニゴ・アリスタ(Íñigo Arista)の紋章。
6・コレッラ家の紋章
赤地に銀の鐘、7つの金の鋸歯状の縁取り。
コロンナ家
赤地に銀の柱。柱頭と土台は金。上部に金の冠。
コロンナ(Colonna)という姓が円柱を意味する。
ゴンザーガ家
金と黒で2色交互、横に6分割された帯。
1394年、神聖ローマ帝国皇帝王ヴェンツェルからボヘミアの紋章(赤地に戴冠した銀のライオン)が与えられ、組みこまれた。
1433年、フランチェスコ1世・ゴンザーガは、ヴェンツェルの次次代皇帝シギスムントからマントヴァ侯爵の称号を与えられ、銀地に赤の十字架、4隅に黒い鷲の紋章が組みこまれた。
スフォルツァ家
金地に、冠を戴いて翼を広げた黒い鷲と、
白地に、冠を戴いて人を呑みこむ青い大蛇(竜)。
大蛇の紋章は最初のミラノ公ヴィスコンティ家の紋章。
子どもを丸呑みにしようとしている蛇を倒した、ヴィスコンティ家の勇壮を称えての図案、という説と、
敵の兵士(サラセン人)を呑みこむ強大な大蛇の図案、という説とある。
1394年、ジャン・ガレアッツォ・ヴィスコンティは、神聖ローマ帝国肯定ヴェンツェルによってミラノ公の称号を授与される。
1397年、大蛇の紋章に神聖ローマ帝国の紋章である黒鷲を組みこんだ紋章が作られ、新たなミラノ公爵の紋章となった。
(単頭の黒鷲はもともとローマ帝国の国章。神聖ローマ帝国へと受け継がれ、やがて双頭になり、ハプスブルク家へと継承されていく。)
ヴィスコンティ家は嫡子が途絶え断絶、ビアンカ・マリア・ヴィスコンティの夫であったフランチェスコ・スフォルツァが、1450年にミラノ公となった。紋章もスフォルツァ家に受け継がれた。
バリオーニ家
青地に金の帯。
ピッコローミニ家
銀地に青の十字架。十字架の中に金の上弦の月が5つ。
ファルネーゼ家
金地に6つの青い百合。
ペトゥルッチ家
鋸歯状に斜め分割された金と青。金地には黒の鷲。
鷲は、強さ、勇気、不死などの象徴。
ベンティヴォーリオ家
鋸歯状に斜め分割された金と赤。
マキァヴェッリ家
銀地に青の十字架と中央を向いた4つの釘。
釘はキリストが磔になった時に使われたものを指す。意外と信仰心の篤い紋章。
マラテスタ家
鋸歯状の金と黒に囲まれた6つの斜めの帯。帯の3つは赤と金の市松模様、残りは銀。
マンフレディ家
金と青のクォータリー (英・Quarterly)(伊・inquartato)(4分割された紋章図形のこと)
メディチ家
金地に赤い5個の球。
上部に赤球よりも大きい青地の球。そこには3つの金の百合が描かれる。
メディチ(Medici)には「医師」「医薬」という意味があり、メディチ家はもともと、医師もしくは薬屋であったのではないかとされる。
赤い球はその職業にちなみ、丸薬を意味する。「吸い球」という瀉血するための道具とも言われる。
また、メディチ繁栄の基となった銀行業にちなんだ、貨幣であるとする説もある。
最初の紋章は赤球が8つであったが、後に6つとなる。が、一定はせず配置もさまざまにされた。
1465年、フィレンツェの庇護者であったフランス王ルイ11世によって、フランスの紋章(青地に金の百合)を使うことを許される。以降、上部の球は青地に金の百合が配され、他の赤球より一際大きく描かれるようになった。
モンテフェルトロ家
上部3分の1は、金地に戴冠した双頭の黒い鷲、
残りの部分に、金と青で斜めに分割された帯。
リアーリオ家
青と金に分割され、上部の青地に金のバラ。
デッラ・ローヴェレ家
青地に、枝が交差した金のオーク(樫の木)。
紋章の色の意味
紋章に使用される色は全部で7色。それ以外の色は使用されない。緑が使用されることは少なく、紫はもっと少ない。
金 or
紋章を描画する際、黄色に置き換えて描かれる。
最も高貴な色とされる。富と信仰。太陽。日曜日。堅固、純粋、高貴。忍耐、力、恒常性。医薬的効能。)トパーズ。
貴金属としての金
徳に満ちた活力剤。勇気をもたらす。(錬金術で作られた金はその特質はない。)
銀 argent
紋章を描画する際、白に置き換えて描かれる。
純潔と無垢。正義。希望。水。月。月曜日。真珠。
貴金属としての銀
大いなる地位と尊厳。聖なる信仰の輝きと真実。
赤 gules
愛と殉教。勇気と大胆さ。威光。炎。火星。水曜日。ルビー。夏。
青 azure
誠実さと正義。知識。空。木星。火曜日。サファイア(身体に活力を与え、病を癒す。美しく歓びに満ちた石)。秋。
黒 sable
最も卑しい色。悲しみと苦悩。(そこから謙遜の意味に転じて)良きキリスト者。賢明。率直。土。土星。金曜日。ダイヤモンド。冬。
緑 vert
歓喜と若さ。善と美。剛毅。森、草、田園、木。金星。木曜日。エメラルド。春。
紫 purpure
上記の6つの色混色してできる第7の色。最も価値の低い色。逆に捉えて最も高貴な色とする派もある。その場合、王や皇帝の色。
快楽と勝利。神秘。節制。神と現世の恩寵。水星。土曜日。多種多様な美しい石。
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