関連書籍-その他の人々
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- ノンフィクション
- 「ダ・ヴィンチとマキアヴェッリ 幻のフィレンツェ海港化計画」ロジャー・D・マスターズ 常田景子 訳 朝日新聞社 2000年
- 「ルネサンスの女たち」 塩野七生 中公文庫 1973年
- 「メディチ家の人びと ルネサンスの栄光と頽廃」 中田耕治 講談社学術文庫 2002年
- 「図説 メディチ家 古都フィレンツェと栄光の「王朝」」 中島浩郎 2000年
- 「ロレンツォ・デ・メディチ暗殺 中世イタリア史を覆す「モンテフェルトロの陰謀」」マルチェロ・シモネッタ 熊井ひろ美 訳 2009年
- 「レオナルド・ダ・ヴィンチ」 アレッサンドロ・ヴェッツォシ 高階秀爾 監修 創元社 1998年
- 「図説 レオナルド・ダ・ヴィンチ 万能の天才を尋ねて」編・文・写真 佐藤幸三 文 青木昭 河出書房新社 1996年
- 「モナ・リザ・コード」ダイアン・ヘイルズ 仙名紀 訳 柏書房 2015
- 「図説 ミケランジェロ」 青木昭 河出書房新社 1997年
- 「イザベッラ・デステ ルネサンスのプリマドンナ」マッシモ・フェリサッティ 千種堅 訳 河出書房新社 1987年
- 「ルドヴィコ・イル・モーロ 黒衣の貴族」マリアーナ・フリジェーニ 千種堅 訳 河出書房新社 1987年
- 「サヴォナローラ イタリア・ルネサンスの政治と宗教」エンツォ・グアラッツィ 秋本典子 訳 中央公論社 1987年
- 「イタリアの鼻 ルネサンスを拓いた傭兵隊長フェデリーコ・ダ・モンテフェルトロ」B・レック A・テンネスマン 藤川芳朗 訳 中央公論新社 2017
- 「マキァヴェッリの生涯―その微笑の謎」マウリツィオ ヴィローリ 武田 好 訳 白水社 2007年
- 「スペイン女王イサベル その栄光と悲劇」小西章子 朝日新聞社 昭和60年
- 「狂女王フアナ」西川和子 彩流社 2003年
- 「図解雑学 ハプスブルク家」 菊池良生 ナツメ社 2008年
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- ノンフィクション
ノンフィクション
「ダ・ヴィンチとマキアヴェッリ 幻のフィレンツェ海港化計画」ロジャー・D・マスターズ 常田景子 訳 朝日新聞社 2000年
1502年、イモラにてチェーザレを媒介に出会ったであろうダ・ヴィンチとマキァヴェッリ。(この本では出会ったと諸々の根拠を示して断言してある。)
二人は1503年から対ピサ戦の軍事作戦で協力し合うようになり、アルノ河の流れを変えピサから水を奪い降伏させようという計画に着手する。ダ・ヴィンチは水路変更だけではなく、さらにフィレンツェを海港にするという青写真まで描いていた。
結論から言うとこの作戦は失敗していて、だからダ・ヴィンチマキァヴェッリどちらの研究者からもわりと無視され重要視されて来なかったよう。
でも成功したことだけが面白いわけじゃないから。チェーザレだってイタリア統一失敗してるし。(でもめちゃくちゃ面白いしょ!!)
実際、チェーザレの下でイモラの地図を作りチェゼナティコから水路を引く計画を立てていたダ・ヴィンチの経験が、アルノ河に対して活かされてるのを見るのはとても興味深い。
図や写真も(白黒で小さいけど)たくさん載せてあってわかりやすいし楽しい。
ダ・ヴィンチ、マキァヴェッリそれぞれの人生も語られるので、伝記として読める部分もある。
こういう研究書、しかも訳書って読みにくいと思うんだけど、これは改行も適切にされてるし文章も平易で読みやすいと思う。
「ルネサンスの女たち」 塩野七生 中公文庫 1973年
![]() | ルネサンスの時代(15世紀半ば)を生きた4人のイタリア人女性の物語。 マントヴァ公妃イザベッラ・デステ、 チェーザレの妹ルクレツィア・ボルジア、 フォルリの女城主カテリーナ・スフォルツァ、 ヴェネツィアからキプロスへ嫁いだカテリーナ・コルネール、 それぞれの人生が4つの章で描かれる。 カテリーナ・コルネール以外の3人が、チェーザレと縁のある人々なので楽しい。 |
女だてらに国政を握るイザベッラとカテリーナ。無能ではなかったにせよ、名君主とは言えず、ヒステリックな女の業が透けて見えておもしろい。
ルクレツィアは「何もできないわからない、可愛いだけのお人形」として描かれている。が、それはそれで魅力的。
歴史的背景や動きの説明も多いが、「歴史」というより「物語」のように語られるのでわかりやすい。
私はチェーザレ布教教本として「チェーザレ 破壊の創造者」「チェーザレ・ボルジア あるいは優雅なる冷酷」「君主論 まんがで読破」の次に貸し出す本にしています。
「メディチ家の人びと ルネサンスの栄光と頽廃」
中田耕治 講談社学術文庫 2002年
「図説 メディチ家 古都フィレンツェと栄光の「王朝」」 中島浩郎 2000年
![]() | 13世紀末、共和制フィレンツェ時代にその名を現し、幾度かの中断はあるものの、18世紀末までの約500年間、フィレンツェの実質的支配者であり続けたメディチ家。その興亡を、豊富な写真を交えて簡潔に紹介する。全11章。 1章 十三、十四世紀のフィレンツェ 2章 ジョヴァンニ・デ・ビッチ 3章 「老」コジモ 4章 「痛風病みの」ピエロ |
5章 「偉大なる」ロレンツォ
6章 「愚昧な」ピエロ
7章 メディチ家の帰還
8章 二人の教皇
9章 コジモ1世とトスカーナ大公国
10章 フランチェスコ1世とフェルディナンド1世
11章 メディチ家の終焉
歴史の流れを追うだけでなく、歴代の当主それぞれの個性やエピソードが、肖像画を添えて描かれるので、親しみやすく、読みやすい。そしてとてもわかりやすい。
メディチの系譜と、それと密接に関わりあうフィレンツェの歴史を知ることができる。
「ロレンツォ・デ・メディチ暗殺 中世イタリア史を覆す「モンテフェルトロの陰謀」」
マルチェロ・シモネッタ 熊井ひろ美 訳 2009年
スフォルツァ家の書記官であったチッコ・シモネッタの末裔である著者、マルチェロ・シモネッタが、ウルビーノで発見した暗号で書かれた書簡を読み解き、「モンテフェルトロの陰謀」を描き出す。
あらすじを読んで、フィクションだとばかり思っていたら、ノンフィクションだった。びっくり。
荒唐無稽な仮説にすぎないのでは、と思いきや、歴史学者である著者の提示する根拠は、なかなかに説得力を持っている。発見された書簡の写真も載せられているし。
システィーナ礼拝堂に描かれた、ボッティチェッリのメッセージについては、ちょっと夢想しすぎ・・・と思うけど。
チェーザレの活躍よりもやや早い時代のイタリア。(チェーザレの名は1ヶ所だけ登場。)
しかし名君暴君が火花を散らし、詭計、策謀、姦計、に満ち満ちた油断ならない世界は共通している。
おもしろい。
「レオナルド・ダ・ヴィンチ」
アレッサンドロ・ヴェッツォシ 高階秀爾 監修 創元社 1998年
「図説 レオナルド・ダ・ヴィンチ 万能の天才を尋ねて」
編・文・写真 佐藤幸三 文 青木昭 河出書房新社 1996年
チェーザレに仕えた時期に、6ページ使われているのが嬉しい。ウルビーノ、イモラ、シニガリアでのできごとに言及されている。
ただ、筆者の目線というか考察が、なんとなく素人っぽいところが気になる。旅行記かよ!と思えるページもあるし。だからとっつきやすくて、読みやすいのかもしれないけど。
どこで、何があったのか、ということをしっかり書かれているので、「ダ・ヴィンチゆかりの地をめぐる旅」に使えると思う。
「モナ・リザ・コード」ダイアン・ヘイルズ 仙名紀 訳 柏書房 2015
タイトルで損してる気がする…。どうしてもダ・ヴィンチ・コードを連想してしまうので(そこにあやかって邦題こうしたんだろうけど)、エンタメ小説だと思ってしまう。
原題は「Mona Lisa: A Life Discovered」(モナリザ:発見された人生)。モナリザのモデルと言われるリサ・ゲラルディーニとレオナルド・ダ・ヴィンチの人生、2人の関わりを研究したもの。
著者は美術史家ではなくジャーナリストで、だからか語り口が軽妙。専門家じゃないから、目線が一般人寄りと言うか。難しいこと言わない。
しかしリサに対しての興味関心は人一倍で、情熱がほとばしってるのがわかる。めっちゃ熱い。
リサの生きた時代の前後、14世紀半ば16世紀半ばまでのイタリア、フィレンツェ、そしてそこで生きる中産〜上流階級の一家が描かれるので、歴史とともに庶民の生活が見えて面白い。
しかし女性の社会での在り方、結婚して子ども産まされまくるか修道院に行くかのほとんど二択。虐げられすぎでしょ…
そんな中で強くでもなく淡々とでもなく、何だろ、普通に?生きたリサ。普通だからこそ普遍的で惹かれるものがあるのかな。
もちろんダ・ヴィンチの生涯もひと通りわかる。
チェーザレも少し登場する。好意的ではないが悪意もない描き方。ルックスはかなり褒めてある「武将チェーザレ・ボルジアは長身で肩幅が広く、腹も締まっており」「ボルジアはヨーロッパきっての美男子ともてはやされることも…」だって。
リサに特に興味はなくても、ダ・ヴィンチと当時の人々の暮らし、フィレンツェの歴史を軽く知るのに良い。読みやすいし。
「図説 ミケランジェロ」 青木昭 河出書房新社 1997年
逃避をくり返しては自分を責め、不都合を嘆く手紙ばかりを書き、人嫌いで偏屈だったというミケランジェロ。
芸術に身を捧げた鬱屈した変人は、その作品だけでなく人生も、躍動的で波乱に満ち、関心を誘う。
「イザベッラ・デステ ルネサンスのプリマドンナ」
マッシモ・フェリサッティ 千種堅 訳 河出書房新社 1987年
ルネサンス芸術のパトロンであり、辣腕の政治家であったと評価される、ルネサンスのプリマドンナ。
しかし、なんだかどうしても、あざとく取り澄ました雰囲気を感じてしまう。気も我も強く、プライドの高い、見栄っ張りなオバサン。
歴史に名を残したのは、妹への対抗心と息子への溺愛の生んだ、たまたまの結果だったんじゃないの・・・というのは言いすぎか。嫌いじゃないんだけど。できる女であったことに間違いはないんだろうだけど。
彼女の人生は塩野七生著「ルネサンスの女たち」に、簡潔にまとめられているので、その後に読むとよいと思う。
「ルドヴィコ・イル・モーロ 黒衣の貴族」
マリアーナ・フリジェーニ 千種堅 訳 河出書房新社 1987年
イヴァン・クルーラス著「ボルジア家」</a>と同シリーズのもの。全9章。265ページ(あとがき含)。
ルネサンス君主を代表する、ミラノ公ルドヴィーコ・スフォルツァ(イル・モーロ)。
兄ガレアッツォ・マリア・スフォルツァとボーナ・ディ・サヴォイアの結婚(1468年)から、捕らえられ獄死する1508年までを描く。
「チェーザレ・ボルジアも及ばぬ、マキアヴェッリ描く君主そのもの」として、ルドヴィーコ・イル・モーロにとても好意的。
外国勢力のイタリア侵入を許したことで評価を落とす彼を、ルドヴィーコにその意志はなかった、と擁護してまでいる。ほんと~?
著者はかなりのイル・モーロファン?と思えるが、その割に彼そのもののエピソードは少ない。ミラノの人々を中心としたイタリアの政治情勢が多く描かれ、人物よりも背景に焦点があてられている感じ。イル・モーロ伝としては物足りない。
がしかし、「イタリア史」という大まかなくくりでは描かれることのない、細かな出来事についてよくわかる。いろんな闘争が、こんなにあったんだなあ、と感心する。
イル・モーロが黒衣の貴族と呼ばれる所以は、妻ベアトリーチェの死以来黒衣をまとっていたということなんだけど、「第8章 ルドヴィコ、黒衣の貴族となる」という章が、ベアトリーチェの死よりも前にあるのは何故だ!
もうひとつ、1498年チェーザレの還俗時に「枢機卿の帽子を授与」としてあるのは完全に間違い(誤訳?)だよ~!
「サヴォナローラ イタリア・ルネサンスの政治と宗教」
エンツォ・グアラッツィ 秋本典子 訳 中央公論社 1987年
サヴォナローラの生涯。
僧門に入った22歳から、処刑される46歳までを、多くの外交文書、書簡などを交えてひも解く。
文章が平易で読みやすい。
サヴォナローラの対立した、メディチ家とボルジア家との関係について深く描かれるので、とても興味深く読み進められる。サヴォナローラを切り口にして見るボルジア家。新鮮。しかし、そう目新しいことは描かれない。
アレクサンデル6世の破門状の訳などが載せられているのは高評価。塩野七生著「神の代理人」の1編、「アレッサンドロ6世とサヴォナローラ」と合わせて読むとより良いだろう。
サヴォナローラの権力を高めるきっかけとなった、シャルル8世のイタリア侵攻も、かなり詳細。メディチがフィレンツェを追われるはめになった過程もよくわかる。
それらを通して、当時の社会の様子、政治状勢、その中でのフィレンツェの立場なども見通すことができる。
筆者の視線が過剰にサヴォナローラを擁護しておらず、神聖視もしていないところも好感がもてる。
その客観的な視線は淡々としていて、サヴォナローラの人と成りには、今ひとつ肉迫できていないようにも思えるが。
ラスト、拷問され処刑されるくだりは思わず同情してしまう。彼の言動は、極端ではあったものの、全てが誤りであったわけではなかっただろうに・・・。
熱気と迫力に満ちた説教のみを武器として、政庁や教会、ひいては世界そのものに立ち向かったサヴォナローラ。
彼の鋼のように硬質な個性は、うっとうしいながらも強烈な存在感を持つ。
「イタリアの鼻 ルネサンスを拓いた傭兵隊長フェデリーコ・ダ・モンテフェルトロ」
B・レック A・テンネスマン 藤川芳朗 訳 中央公論新社 2017
1444年から1482年までウルビーノの支配者だったフェデリーコ・ダ・モンテフェルトロ。
チェーザレの時代には息子グイドバルドに受け継がれているので直接の関係はないけれど、チェーザレ以前のイタリアの情勢がウルビーノを中心としてわかりやすく描かれている。
中でもライヴァルだったマラテスタとの関係には1章も使われている。
またウルビーノの建築や絵画の解説も詳細。
チェーザレはウルビーノ攻略した後パッラッツォ・ドゥカーレを居城としていたので(マキァヴェッリはフィレンツェ大使としてここに伺候している)(塩野七生版でレオナルド・ダ・ヴィンチがチェーザレを訪ねて来たのはここ)、第9章 都市という形をとった宮殿など興味深く読める。
筆者の視点が無駄にフェデリーコ礼賛でなくフラットなので、信頼できる…というか印象がいい。
グイドバルドはフェデリーコ夫妻の9番目の子で長男、つまり妻バッティスタ・スフォルツァはそれまで8人の女児を産んでいる。そしてグイドバルド出産後、26歳で死去。
フェデリーコはバッティスタをすごく愛してたらしいけど、男児生まれるまで妊娠させ続けられた感ありすぎて引く。…子産み器械じゃん…
「マキァヴェッリの生涯―その微笑の謎」
マウリツィオ ヴィローリ 武田 好 訳 白水社 2007年
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「スペイン女王イサベル その栄光と悲劇」小西章子 朝日新聞社 昭和60年
父ファン(ホアン)2世の時代から、娘ファナの時代まで、イサベルの人生を切り口にしてスペインの歴史がわかる。
文章が柔らかくて読みやすい。筆者の方の中にあるイサベル像が等身大という感じで、大仰に讃えることもなく、こき下ろすこともなくフラットな目線で描かれていて、好感が持てる。
地図や家系図、肖像画(白黒だけど)、年表なども載せられていてイメージもしやすい。
ただイサベルを通して見たスペイン王家の歴史という感じなので、イサベルにまつわるエピソードは薄い気がする。もっと個人的な、例えばゴンサロ・デ・コルドバとの話とかもっと深く知りたかった。
イサベル女王の娘イサベル王女との結婚条件で、ポルトガルはスペイン同様にユダヤ人やモーロ人(ムーア人)を国から追放し、経済力と商業力を失ってしまったというのが、面白いなと思った。
まさかそんなことに繋がるなんて絶対思わないよね。歴史…後世から見ないとわからないこといっぱいある。
「狂女王フアナ」西川和子 彩流社 2003年
文章がですます調で読みやすい。上の「スペイン女王イサベル」を書かれた方と文体は違うんだけど、雰囲気が似てる。どちらも主人公の女性を愛してる感じがする。
こちらは章の変わり目にエッセイが入るから余計に筆者の存在が濃い。
最初の数ページにカラーの絵画が載せられてるの嬉しい。全部有名な絵だけど、読みながら見られるのいい。白黒だけど中に地図、家系図、肖像画、写真もある。
ファナは1555年まで生きてるので、チェーザレ死後のスペインの様子も少しわかる。
ファナの父アラゴン王フェルナンドと、夫である神聖ローマ帝国皇帝マクシミリアンの息子フィリップは、どちらもファナの地位カスティーリャ王を狙っていたので、チェーザレがもう少しモタ城で生きてたなら、どちらかに利用されるかたちで武将として生きていられたんじゃないかと思ってしまう。
チェーザレのこと抜きにしても、感受性が強く極端に振れてしまう感情を制御できない気質ってだけ(に思える)女性が、夫への愛と執着から狂女となっていく物語は面白い。
映画「女王ファナ」を観てから読むとより世界に入り込めると思う!
「図解雑学 ハプスブルク家」 菊池良生 ナツメ社 2008年
フィクション
「逆光のメディチ」 藤本ひとみ 新潮文庫 平成8年
特に服装、建築について、多くの名詞が頻出するのが興味深い。「銀糸で刺繍した薔薇色のシラクス」「コットの紐結び」「スタッコ装飾」「マヨルカタイル」・・・。
ぜひ、それらがどういうものであるのかを、知りたいと思う。
アンジェラの、ジュリアーノに対するせつなくも強い恋心が、読みどころのひとつであるのだが、アンジェラの「ハウス劇場の主人公」みたいな、一直線すぎる性格が好きになれず、感情移入できなかった。だから、「ダ・ヴィンチの回想録」などとせずに、ストレートにメディチ兄弟物語でよかったのでは、と思えてしまう。
が、客観的に見て、恋愛小説と歴史小説の融合した、楽しめる作品であると思う。
「レオナルドのユダ」 服部まゆみ 角川書店 平成15年
優しく繊細で、気品漂うダ・ヴィンチが魅力的。
「私の作品など・・・大いなる自然にはとてもかないません・・・」なんて、瞳を伏せつつ言いそう。奥ゆかしく。
もっと泰然として威圧的なイメージだったけど、このダ・ヴィンチ像もなかなかいい。
イル・モーロやレオ10世、ラファエッロ、ピエトロ・ベンボまで登場し、ルネサンス物語としてもとても楽しい。特に「第2章 1511年~1516年」。ジョーヴィオの視点で描かれるヴァティカンの住人たちは、活き活きと怠惰で享楽的で、あざやか。こういう、説明調でないエピソードでつづられる描写は、歴史小説ではあまりないと思う。
チェーザレも直接ではないが、人々の会話やモノローグの中に登場する。数行だけど。
全くの予備知識なし!でも問題なく読めるが、多少なりともダ・ヴィンチの作品や歴史的背景を知っていると、もっとおもしろく読めると思う。
「王妃の離婚」 佐藤賢一 集英社文庫 2002年
おもしろい。
歴史を知らなくても、逆に知っていて結末を判っていても、チェーザレ好きでなくても、おもしろく読める物語だと思う。
主人公は中年弁護士フランソワ。彼は零落してはいるが、神童と謳われた男だった。
僧籍にありながら1人の女を愛し、彼女を幸せにできなかった彼は、苦い過去を払拭するために、離婚裁判の被告となった王妃の弁護に立ち上がる。
正義が権力に立ち向かう。圧倒的な不利から、弁舌鋭く、民衆を味方につけて逆転していく様は、とても気持ちがいい。
胸をすく裁判劇であるが、男と女の悩ましくやるせない物語でもある。
ジャンヌ王妃とルイ王の関係を裁く裁判に、フランソワと彼の愛人であったベリンダの関係を巧みに絡めてある。それによって、物語は深みを増す。上手い。
愛に悩み、結婚に悩み、離婚に悩む。時代が変わっても場所が変わっても、男と女は常にその関係に悶々としながら生きているようだ。それは喜びでもあるのだろうけれど。ジャンヌもベリンダも可愛くて、せつない。
チェーザレのフランス行きの裏側ではこのようなことが進行していたのかと、別の感慨も湧く。チェーザレは名前だけ数ヶ所登場。彼の(というか教皇庁の)代理人アルメイダが切れ者で嬉しい。
第121回直木賞受賞作品。
「グノーシスの薔薇」 デヴィッド・マドセン 大久保譲 訳 角川書店 2004年
が、しかし、連ねられるエピソードがあまりにも卑猥でしょーもなく、「トンデモ本」的要素の方が勝ってると思ってしまう。最初は面白く読んでたけど、だんだん辟易してくる。展開も無理やりさを感じてしまうし・・・。
主人公やレオ10世のキャラは魅力的。
ペッペは、コンプレックスに負けない賢さ強さを持っていて愛らしいし、「女役を好まれる」聖下は、聡明さを持ちながらも低俗で人間くさくて、私の思う「レオ10世」に近しかった。
本編とはほぼ関係ないが、ラファエロやダ・ヴィンチも登場。精力絶倫のラファエロは、これまたイメージに合ってて笑えた。ダ・ヴィンチは合わんなー。
チェーザレとアレクサンデル6世は、名前だけ数ヶ所登場する。
ルネッサンスの時代の、庶民から聖職者までの暮らしや風俗が描かれるのはとても興味深い。どこまで信用していいのかは疑問だけど。
熟れきってんだか腐ってるんだかという世界を、独特の視点で描き出しているとは思う。冒頭にも書いたけど「甘美な腐臭」、まさにそんな感じ。珍味好きは面白く読めるかも。
本質的なテーマについては、残念ながらあまり玩味できなかった。非キリスト教徒の日本人だから・・・?かな?
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